外来魚問題

今年6月に外来生物法という法律が施行されました。指定された外来魚を生かして持ち帰る、飼う、リリースすること等が禁じられました。
外来魚は、日本に元々生息している在来魚に大きな被害を与えています。被害は別に食外だけではありません。国内移植による遺伝子かく乱も大きな問題の1つです。また、コイヘルペスのように、ウイルスをばら撒いてしまうという例もあります。

外来魚には大きく分けて2通りあり、ひとつは国外移入、そして国内移入です。前者の例はオオクチバス、ブルーギル、ニジマス。後者の例はコイ、ゲンゴロウブナ、ビワヒガイなどが挙げられます。世間では国外移入ばかりを問題にしがちですが、国内移入による遺伝子かく乱の問題も相当深刻なものと考えられます。

●外来魚の拡散
もそも外来魚問題というのは全てが人間が増やそう、定着させようと意図して放たれたものです。責任が漁協にあること、放流が伝統的に行なわれていることも問題を深めています。魚類は人の手以外では他水系への拡散の方法はありません。よって人による拡散、流出を防げばこれ以上生息地を拡げないことは不可能では無いと言えます。それが1番の方法です。

●国内移入魚
移入魚の問題はなにも海外からの移入魚によるものだけではないということは前述しました。国内からA水系にB水系産のメダカが移入されたとします。するとA産のメダカとB産のメダカが子を作り、場所によってちがう各々の集団固有の遺伝子が交雑し合ってしまいます。それは自然が長い年月によって築き挙げられていた微妙な遺伝子の差が失われる、イコール自然財産の崩壊を意味します。国内移入は善意や水産業の発展目的、被害の認知不足での放流がほとんどです。特に琵琶湖産アユの放流は琵琶湖に生息する他の魚がアユに混入し放流先の生態系を大きくかく乱してしまう事も多いです。コイ、ニシキゴイの放流は水質浄化や鑑賞用として各地で伝統的に放流されているがコイによる食害で、二枚貝、巻貝、水棲昆虫、水草も大きな被害をうけます。コイを大量放流することは他の水棲生物にとっては脅威なのです。こういったことを防ぐ為にも安易な放流は避けるべきです。

●主な外来魚

オオクチバス Micropterus salmoides
1925年、北アメリカ原産のオオクチバスが神奈川県芦ノ湖に釣りや食用のためにたった100匹放流されました。その後、1930年代に長崎県に放流。瞬く間に増え、1988年に45都道府県で定着。現在では全都道府県に定着しています。魚卵など、動かないものを除いて目に付く生き物を食べ尽くします。池など何処にでも居るという印象がありますが、比較的水質汚濁に弱いため、増殖の原因の一つに水質改善が挙がると思われる水域もあるらしいです。主に食害による被害が大きいです。河川改修で生息、産卵に適する場所が増えているということも増殖の要因ですが1番の要因は釣り人の密放流、コアユに混ざった稚魚の放流でしょう。しかしこれによって多くの釣り業界が支えられているも確かで、解決は非常に難しいでしょう。


ブルーギル Lepomis macrobirus
原産地は北アメリカ。エラブタの一部が青い事によりこのような名前で呼ばれます。1960年に当時の皇太子が観賞用としてシカゴから贈られ、まずは皇居敷地内の池へ、そののち静岡県一碧湖へ放流。そして研究、鑑賞目的で各地に放流。今やその生息地は北海道まで幅広く拡大しました。釣り対象とされた時期もあったようだが流行らず、何でも食べる習性やその繁殖力が問題とされました。

●確認したことのある国外外来水生動物一覧
(東海三県、半海水までの淡水〜汽水域における)
魚類
サケ科ブラウントラウト
コイ科タイリクバラタナゴ
ドジョウ科カラドジョウ
カダヤシ科カダヤシ
グッピー
タイワンドジョウ科カムルチー
サンフィシュ科ブルーギル
オオクチバス
カワスズメ科ナイルテラピア
甲殻類
カブトエビ科アメリカカブトエビ
ザリガニ科アメリカザリガニ
ワタリガニ科チチュウカイミドリガニ
Panopeidae科Rhithropanopeus harrisii subsp.
(ミナトオウギガニ)
掩喉類
ヒメテンコケムシ科オオマリコケムシ
貝類
リンゴガイ科スクミリンゴガイ
モノアラガイ科ハブタエモノアラガイ
サカマキガイ科サカマキガイ
シジミ科タイワンシジミ?
イガイ科カワヒバリガイ
コウロエンカワヒバリガイ
ムラサキイガイ
両生類
アカガエル科ウシガエル
爬虫類
ヌマガメ科ミシシッピーアカミミガメ
スッポン科スッポン類
昆虫類
アメンボ科トガリアメンボ
イネゾウムシ科イネミズゾウムシ
 
 


●今後の対策
ため池など限られた水域で無い限り、完全な駆除は難しいでしょう。そこで、まずは生息地をこれ以上拡げないようにするのが大切で、外来生物法が大きな効果を発揮していることでしょう。しかし、実際には密放流者が沢山います。これらを厳しく取り締まることが必要になります。放流者は個人の場合が多くとても難しいことですが、これ以上外来魚を増やさないためには避けて通れない事なんではないでしょうか。

●駆除について
駆除はため池では水抜きをすることで根絶やしにすることができます。河川や湖については地道な駆除を続けていくことが必要です。
また、ブラックバス駆除は近年バスの習性を利用しての大量駆除が日本各地で行なわれているようです。越冬地で刺し網で捕獲する方法、人工産卵箱の様な物を作り産卵させ卵ごと駆除する方法、表層を群れを成して泳ぐ稚魚を三角網で捕獲する方法などがあるようです。

●外来魚問題に対する見解
外来魚問題に対するとらえ方は、人によって様々で、考え方も「根絶やしにしなければならない」、「安易に駆除してはならない」など多種多様です。今も反対派、賛成派に分断され壮絶な論戦を繰り広げています。しかし私はそれらのどれが正しい、間違っているなどと定義することはできないと思いますし、これからもいろいろな人たちの意見を聞き、自分なりの思いもふらつくと思います。しかし、外来魚問題を深く考えれば考えるほど「なんで放流してしまったんだ」という思いにたどり着くばかりです。やはり一番悪いのは放流です。
外来魚問題は、簡単に言うと放流問題なのです。今日続けられている討論も、放流問題の対処法を話し合っているものであり、枝葉末節であるため決着がつけられないのだと思います。
本格的な駆除が是か否かはまだ分からないというのが私の最終的な考えです。






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