水田について





●水田は最も身近な自然
僕が、日本産淡水魚に興味を持つようになったのは、家の周りに多数の水田があり小学生のころに毎日のように遊んでいたころから始まりました。最初の頃は何も考えすに遊んでいましたが、だんだん水田が潰れてマンションや駐車場になってゆく事になんとなく寂しさを感じ、淡水魚を取り巻く問題に関心を持ち始めました。
そう水田とは僕にとっては全てのきっかけとなった存在です。

水田は、割と住宅地のすぐ傍にもあるような身近な存在です。しかし、その中には水が満たされている限り常に食物連鎖が発生していて、実に様々な生き物が生活しています。いつもは素通りしている水田もたまには覗いてみましょう。


●水田の一年
水田の一年はまず初夏に水を張り、しろかきという作業を行なって耕します。
水を張った時点ですぐさま水路からドジョウ、メダカ等がまっさきに進入してきます。冬眠していたザリガニやタニシも活動を始めます。何処からともなくウキクサも増え始めます。その後水田には田植え機によって苗が植えられ、除草剤が撒かれます。スクミリンゴガイの被害が大きい所では殺貝剤も散布されることもあったようですが現在では殆ど撒かれていません。
夏になり、イネはグングンと成長します。この頃から頻繁に魚が出入りするようになり、夜は毎日のようにナマズが水田で産卵しています。水草も芽を吹き成長を始めます。
夏は水田が最も賑やかな時期です。そっと覗いてみるとあらゆる魚の稚魚やオタマジャクシが泳いでいるのが見られるでしょう。
ホウネンエビやカブトエビといった甲殻類もこの時期大量発生します。
7月後半に、水抜きという作業が行なわれます。これは一度水田の水を抜いて乾かす事によって本来イネが育つ環境の乾季に似た状態を作るためです。
その期間には水田で少し大きく育った稚魚たちが川や水路に進出し、オタマジャクシはカエルになります。
その後水が入った後はカエルが多くなり、若魚になったフナ達は水田に入らず水路で生活します。
そして秋になり水が落とされコンバインによる稲刈りがされます。水が無くなりカエルは草むら等に移り冬眠の準備をします。
米が脱穀されたもみかすは普通捨てられますが、水田に撒き火を放って肥料にする所もあります。
そして春まで放置されます。

●水田に住む生き物たち
水田で生きる生き物の一部を紹介します。


<メダカ>
日本では昔は身近に目にする魚でしたが、 最近は水田内では見る機会がめっきり減ったメダカ。水田には居なくとも水路には多分居ます。


<ドジョウ>
ドジョウは一般的に水田で産卵します。
夏になると水田には多くのドジョウが出入りします。


<ヒメガムシ>
最近では水田のゲンゴロウ類が減ってしまい、代わりにこのヒメガムシが子供たちにとってもっともポピュラーな水生昆虫となっています。


<コマツモムシ>
ヒメガムシと並んでポピュラーな水生昆虫。昔は多く居たマツモムシは姿を消し、今はひとまわり小さいコマツモムシが生き残っています。

   
<カエル類>
左上からダルマガエル、トノサマガエル、アマガエル、ヌマガエルです。
カエルはいまでも水田に広く生息しています。


<アメリカザリガニ>
外来種のザリガニも水田で目にします。水鳥がよく食べるので水田より水路の方が圧倒的に個体数が多いようです。数年前までは子供たちの憧れの的でしたが、今では競って捕まえられるほど生き物に興味を持つ子供がいないのが現状です。


<カルガモ>
初夏、水田に水が入って数週間後にやってくる場合が多い。一つの水田には毎年同じつがいがやってくる。

●まとめ
水田は米を育てる他に、沢山の水生生物を育む場でもあります。また、住宅地に不釣合いな珍しい生き物が水田で影ながら生きている事もあります。
水田は大昔に人が作り上げた二次的な自然でもあるわけですが、ちゃんとそれに適応した生き物が生息しています。
それらの生き物が育つ場所をこれからも大事にしていってほしいと思います。


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