放流は絶対ダメ!!



●放流という”問題”
最近、魚捕りをしていると「鯉の泳ぐ川にしよう」とか、「鯉を放流してありますので捕らないでください」などという看板が目に付くことがあります。
まず、コイという魚は雑食性で大食漢です。在来の水草やタニシはもちろんのこと、タナゴの産卵に必要な二枚貝や水質浄化に役立っている底性生物、在来魚の幼魚などをあっと言う間に食べつくしてしまうのです。また、日本の多くの川、池に生息しているコイは一部を除き、ほとんどが「ヤマトゴイ(コイ飼育型)」と呼ばれる、飼育されたものが逃げ出し野生化したと言われているものです。要するに移入種なのです。自然下でもこのような状態なのに、放流用のコイが日本原産のコイであるとは思えません。
きつく言えば、川にコイをばらまくことは、川を殺すことと同じです。
コイを大量に放流すると、川を浄化する生物は瞬く間に捕食され水が汚れ、ヘドロの溜まった死の川になってしまうかもしれません!!
少なくとも、コイの放流がどれだけ危険かお分かりいただけたんじゃないかと思います。
ではコイじゃなければいいのでしょうか??  いえ、違います。
コイの放流はただの一例にすぎません。 詳しくはこれから説明しますので、読み進めていってください。


↑釣られている鯉が嬉しそうなのは気のせいでしょうか(笑
放流は自然を壊す側です、自然を大切にしてください。


●あの忌わしき問題の発端、それは放流
淡水魚を取り巻く問題のひとつとして、一般的にまず第一に挙げられるのが、おそらく誰もが知っている外来魚問題だろうと思います。
外来魚問題とは、ブラックバスやブルーギルがはびこって在来魚などを食いつくし、生態系が変わってしまう問題で、物議をかもしているあれです。
詳しくは、外来魚問題のページで解説しているとおりです。
この問題については、獰猛な外来魚の生態や駆除方法ばかりが注目されがちですが、本当に注目すべきことは、根本的な原因が安易な放流によるものだということです。ブラックバスやブルーギルが勝手に海を渡って日本の川に入るなんてことはまちがっても無いでしょうからね。
安易な放流さえしなければ、外来魚問題など自然では起こり得ないことです。外来魚問題も簡単に言ってしまえば放流問題なんです。
今でも飼い切れなくなった熱帯魚などを川などに捨ててしまう人がいます。これはもうマナーだけの問題ではありません。最近ワニガメやカミツキガメが発見されるというニュースが報道されます。カミツキガメはすでに一部で繁殖が確認されているそうです。
この例から見ても、安易な放流を防ぐことによって、そこから派生してくるであろう多くの問題をある程度未然に防ぐことが出来るだろうと思われます。


安易な放流によって生息域が日本中に拡がったブルーギル


●国内移入魚の影響
ここから少しややこしくなってきますが、国内移入魚について話しておかなければいけません。
国内移入魚とは、言葉の通り国内の別の水域から移入された魚のことを言います。
私の住んでいる濃尾平野に限って言えば、ハス、ビワヒガイ、ワカサギ、ゲンゴロウブナなどが国内移入魚として挙げられます。ワカサギやゲンゴロウブナは釣魚として意図的に放流されたものですが、他はおそらく意図せず放流されてしまったものです。
国内移入といっても、目に見えて魚を食い尽くすわけでもなく、生態系にはそんなに悪影響を及ぼしていないかのように思われます。しかし実際は目に見えないところで在来種と競合している可能性が高いでしょう。要するに、移入種が増えて在来種の居場所が減ることによって在来種の生態的な地位をガラっと変えてしまうことなどよくあることなのだ、ということです。
その点を考えると、国内移入魚は国外の外来魚と同じです。むしろ被害が注目されにくい分さらに厄介です。 場合によってはバス、ギルのように駆除も必要になる可能性があるのではと思います。
駆除となるとやはり辛いものがありますので、問題が起こる前に放流をしないことが最優先でしょう。


●移入魚以外を放流すると
さらに話が難しくなってきますが、ここからは放流問題を語る上で欠かせない要素となっています。
国内移入魚はダメ、それなら、川に元々いる魚と同じ種類を、増殖目的で放流するのは よいのか?
いいえ、もってのほかです。
むしろ私はこれこそが、放流問題といわれるものの中でもっとも厄介な問題じゃないかと思います。
ではどのへんがダメなのでしょうか?メダカを放流したとして見ていきます。
メダカは本来、日本のどこに生息しているかによって、遺伝的にいくつかのグループに分かれています。これは、何億年も分かれて暮らしているうちに、同種間でも環境の差などによって遺伝的に微妙な違いが生じたからです。これはあくまで想像ですが、生き物というのはそれらの差異を何億年も重ねていくことによって、いずれは亜種レベルの違いを生じさせるほどの差が生まれ、種分化、進化を続けていくのではないでしょうか。
放流という行為は、その遺伝的な差異、起伏を潰し平坦にしてしまいます。差異を潰すということは、自然界ではまずありえないことなので、自然下で生きるメダカには悪影響しか及ぼしません。
例えば、・・・放流によってメダカが遺伝的に交雑を重ね、全て同じになってしまったとします。
この時もし日本中の水域に何らかのウイルスが蔓延した場合、メダカがそれに対する耐性を持っていないと大量死または絶滅が引き起こされる可能性があります。遺伝的に差異のある集団が多様に存在すればするほど、ウイルスに対抗する遺伝子を持っている可能性が増え、一部の水域では絶滅しても一部では生き残れる可能性が高くなります。
別の川のメダカを放流してしまうと、メダカたちの”時の産物”とも呼べる遺伝的差異が崩れ去ってしまうのです。絶滅危惧種に指定されたのを引き金に放流が活発になされていたメダカは、遺伝的にはもう取り返しのつかない状況になっているかもしれません。
しかも、メダカの減少を理由に放流したからといって、減少した根本的な理由、例えば水質汚濁もしくは河川状況などを改善しない限り、メダカはその後も減り続けるはずです。根本的な問題を解決することが出来れば、メダカは自然と増えてきます。
放流はしつこく言っている通り、絶対にするべきではありません。保護活動全般に言えることですが、自然のシステムをよく理解したうえで実行しなければ、「守る」と思ってやったことが、最悪の結果を招いてしまうかもしれません!


メダカと間違って、外来魚カダヤシを放流してしまう皮肉なケースも・・・どちらにせよ、放流はいけません。


●放流がもたらす目に見えない恐怖
さて、今までいろいろ放流の危険さについて説明させていただきましたが、これで最後です。
現地で採集した淡水魚を家で繁殖させ、放流する。この行為も実は放流先の淡水魚を全滅させてしまう可能性が潜んでいるのです・・・。
数年前、コイに感染するコイヘルペスウイルスが拡がり問題になりました。原因は養殖錦ゴイの放流が関与しています。
この例のように、水槽内で繁殖した菌や微生物が河川に流れ込み、放流先に感染などの被害を受ける可能性があります。
放流は、水棲生物に対して、ありとあらゆる被害の可能性を秘めています。本当に水棲生物のことを考えているのであれば、放流をしないことが重要です。




●おわりに
放流問題の概要は以上です。
このページには、私が淡水魚問題全体で感じたことの中で伝えたかった意見の8割が含まれています(謎)。私が放流についてこのような意見に落ち着いたのは、日本淡水魚類愛護会の西村さんの助言やご教授に多くの影響を受けたからです。西村さん、ありがとうございました。
私に国語力が無いせいで、長い上にややこしかったと思いますが、理解いただけたでしょうか?私の意見に少しでも共感いただければ、これ以上嬉しいものはありません。最後に、文章力に欠けた私のつたない長文を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。



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